あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

届かない

死にたいと思う 確かに思ってはいるけれど、ほんとうに死にたいわけではない それはただ1人、大好きな人のおかげであたしの気持ちから「死にたい」を消してくれたと思っている 「生きるのもくだらないからもう 何もかもを壊してしまいたい でも死にたいわけ…

なぜか今日も幸せで

不思議な人生だと思う あたしの幸せの定義は「幸せかと自分に問わずとも幸せだと感じること」と、非常に抽象的なものだ だからこそ理論上「幸せになりたい」を実現するための努力は1つもできない でもそんな人生を薄っすらと好きだと思える日々を過ごしてい…

興味と夢と、

あたしの好きを、好きな人に捨てられてしまった 音楽は救いで、あたしの人生で1番頭が上がらない芸術だ 「興味ない」と吐き捨てたあなたは、あたしになにを1番伝えたかったのだろうか 小学生のあたしにパパが声をかける 理科の実験ができるイベントの誘いだ…

ロックンロールは鳴り止まない

マンチーに備えた夜食が用意されていて、部屋は煙草の匂いが充満している 誰にも見せられない状態のあたしが泊まっているから清掃はリネンの交換だけ、灰皿はもう溢れている あたしはホテルに備え付けられたシャワーを浴びて、一段低いところにかけると慣れ…

壊した、壊れた

なにも食べていないはずなのに吐き気がして、深夜にメイクをして露出の高い服を着て車に乗りこむ 何年も前に戻った気がした 気遣いでつけてくれていた暖房は吐き気を悪化させるけれど、あたしはなにも言えなかった 世界で1番大切な人と会う週末だけ、抗うつ…

浮ついた気持ち

一途な女ってなんか憧れる 幼なじみと結婚とか、そういやあたしにも結婚するつもりだった幼なじみがいたな 世の中そんなにうまくは行かなくて、重圧に耐えて目を閉じて、瞬きをしたら歌舞伎町にいた 今思えばあれもこれも犯罪だったけど、それがあたしの青春…

女だから、甘いお酒を少しだけ

スミノフを飲む男なんて男じゃない 日本にはたまたまなかっただけのこのセンスをあたしは痛いほど理解できてしまう 甘くて飲みやすい、瓶に入っているジュースみたいなもの、女が飲む飲み物だ 別にスミノフを飲む日本の男を貶すつもりはない ただ、男ならば…

生きる人間の我儘へ

母方の祖父が死んだ。 三連休が明けた平日の2日間を家族旅行に使う優雅さを全身に浴びながら、1人だけ起きれず汗をかくように急いで温泉に浸かった後、両親から告げられた 何も心が動かない自分を、少し冷たく思いながらも「自分らしい」と言い訳をして、朝…

PRAYING XXX

キラキラのクマの形をしたスマートフォンのケースを長い爪が大事そうに抱えている きっと今あたしが目の前にいる誰かなら、あたしのことをそう表現するだろう キラキラは今日も、女の子のかわいいを担ってくれている 心の中で、ずっと考えていた気がする "…

健やかなる次回

気持ちが落ちている 右肩下がりに不安定な状態、なんてものではなく、ストンと音がして底に来てしまったかのような感覚である どう足掻いても摂食障害がつらいという結論に至ってしまう あたしが何度吐いても過食衝動に襲われる人間だと知っている人は、あた…

小さい

1年を2つに分けるとき、あたしは今が転換期である 久しぶりの感覚を味わいながら、少しだけ新しくなるあたしに、少しだけ期待する 新しい手帳を買って、書きやすいボールペンを買った この手帳が6月に機能していないことも、家に同じブランドのボールペンが…

命尽きる魔法

仕事が終わっていないことはわかっていた 納期が過ぎていることくらい、あたしが1番知っている それでもやる気すら起きなくて、ひたすらに笑えるわけでもない動画を見続けていた 画面を見つめていると、あたしの好きだったアイドルがネタにされていた その人…

大嫌いな女との再会

あたしはずっと、自分の顔が嫌いで仕方なかった 中学生の頃に通っていたあるスポーツのスクールで選手コースに入った そのとき身体を鍛えていた周りとは到底体力の差があった 太っていると言われて、レッスンの厳しさのストレスも相まってあたしは帰り道泣き…

嫌いな味のグミ

睡眠薬を絶って丸3日が経とうとしている なぜか眠くなって寝た日から、なんとなくやめて今日だ 確かに昨日は「続けられたらいいな」という意識のもと意図的に飲まなかった ただ別に、誰にも強要されていないので、飲みたい日が来ればいつでも飲もうと思う 寝…

特別な錠剤

季節の変わり目ともいえないのに鼻が詰まってしまった ジャンキーあがりをいいことに、いつもより熱が高ければ風邪薬を飲むし、1度でも咳をすれば咳止めを飲む 量は規定通りなんだから悪いことはしてないし、なによりお前に関係ない ただ、今回の鼻詰まりは…

お洒落の裏側

毎日のようにオンラインショッピングで買ったものたちが大量の箱で届く 両親は心配しているが、あたしが悪い そんなことはわかってる でもあえて、買ってくれる男に買ってもらっていいならばとっくにそうしている、とだけ吐き捨てて、昔の話をしよう 季節が…

聖なる夜、差し伸べられた救いの手

クリスマスイブ、些細なことで彼氏を責めた 厳密に言うと、結果的にされたことや置かれた状況に対してではなく、そこに至るまでの言動と行動に対して悲しくなった、というところだ すぐに寝てしまった〈あたしを傷つけた〉彼氏の腕枕で落ち着けるはずがなか…

確かなこと

‪変わってしまった 別に幸せなつもりだけど、確実に不幸せだったあの頃より、死ぬ理由も生きる理由もない人生になってしまった この前車道に飛び出して、信号の向こうに光る車のライトを眺めていた時、生きていたい願いなどないくせに、死にたい気持ちも浮か…

罪と罰

死にたいと思わなくなった いつ日付がどう変わったのか、自分はその時何をしていたのかなど知らぬままに、酒や薬に溺れていた頃は、生きていたわけではなく、ただ死なずにいただけのことだった ただ、信じてほしい 誰でもない、この文章を目にした何処の誰か…

焦燥

眠れない 恋人があたしのベッドを占領している 彼の寝姿を少しずらして、座る ずっと死にたいと願っていたのに、いつのまにか生きていくことを考えている 幸せも大変だなと愚痴を吐いたら、「死んでください」と言われた 随分な直球だと思った ようやく落ち…

お姫様ごっこ

大嫌いだった昔のあたしが消えていく いつからかロヒプノールをサイレースと呼ぶようになった 大嫌いだけど愛してしまった澱みが消えていく 暴力は愛だよ、わかりやすくて素敵なもの あたしを殴った男はあたしを愛していただけ どうでもいい人間に対して、わ…

4:44

寒空の中で飲む缶のミルクティーは、格別な味がするものだと思っていた さっきのミルクティーに限って、味がしないどころか、温かいとすら思わなかった 140円で買えたのは、ぬくもりではなく味のついた白湯で、それを悲しいとも思わない自分が公園のベンチに…

生きている実感

ああ、鬱だ 雨が降ってきたかのような感覚で、自らの異常を感じ取る もう何も考えたくないと思えば思うほど 考え込んでしまう 全てに興味がなくなって、大好きなはずのイベントもテレビも動画も、なにもかも遮断してしまう 所詮あたしは、セックスでしか自分…

染み付いた防衛本能

お前が選ぶ男なんてどうせろくでもないからと、今の彼氏をあたしの周りは誰も信じていなかった あたしにリストカットをやめさせて、ODをやめさせて、誰でもいいからと手当たり次第に男と寝ていたあたしがこの人だけにしたと伝えても、まだ疑っていた きちん…

罪人

あたしが知らない間に、あたしのことを攫ってほしい そう頼み込んだことがある 自分から逃げ出す勇気はないけれど、このまま死ぬくらいならばどこか違う場所で死にたいと思ったから 助け出してほしい、の先にあった叫びだ でも、あなたがそれを実行するとあ…

キラキラ少女

少しだけぼーっとしていた どこにいるのか、あまりわかっていなかった 夜中の工事現場のど真ん中で煙草を吸っている気もしたし、寂れた駅の灰皿にセブンスターの火種が落ちていく様子が見えた気もした 凍てついた空気が自分を全方向から刺している気がして、…

生き暮れ

年の瀬は慌ただしい ように見せかけて、自分が社会に溶け込んで生活している人間だということを必死に証明している時期だ だいたい忙しい人は年中忙しいし、その逆もまた然り 忙しいと喚く人間は、どうせろくでもない 年末という少し特殊な時期を迎え、重い…

『クラウドガール』

いつだって笑って生きることなんて、あたしにはまだ難しい 久々に、無心で生きているだけなのに涙が溢れる状態になる 心の中では「久々の感覚だな」と、不気味なほどに冷静だった 少しだけ上手く生きている時の自分の「かわいく生きる」のモットー見習ってネ…

新宿三丁目

雨の日に、膝をつけて座り込んで泣いていた 目の前を通ったクラスメイトが「お前は本当に雨が似合うよな」とあたしを一瞥して通り過ぎる 後ろの女がおまけのように、あたしに泥水をかけて去った あたしはあの日から、雨が降る日は苦手だ 大嫌いだけど愛して…

なにもない木曜、正午

アラームが鳴った 恋人の名前を呼んだが、声が掠れていた 返事はなかった 朝のアラームを止める動きをしたが、アラームはまだ鳴っている 薄目を開けると両手を畳み込んで寝たままだった 「この夢の続きが見るために起きるか否か」を選択したことが記憶に新し…