あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

確かなこと

‪変わってしまった

別に幸せなつもりだけど、確実に不幸せだったあの頃より、死ぬ理由も生きる理由もない人生になってしまった

この前車道に飛び出して、信号の向こうに光る車のライトを眺めていた時、生きていたい願いなどないくせに、死にたい気持ちも浮かばなかった

なんとなくの幸せと引き換えに、大切なものを失ってしまった気がした

 

昔いた街に足を踏み入れる

明らかに未成年の女の子が、昔のあたしが薬漬けになってくたばっていた階段に座って食事をしていた

なんの根拠もないけど、昔のあたしとはどこも重ならない女の子だった

目的地を前に、複数の椅子に座った男女がいる

今のあたしとは違って、なんの目的もなくそこにいるように見えた

不確かだけど、不幸せに見えた

用事を済ませて出ると、さっきまで椅子が広げられていたところにはマットレスが敷かれていて、女の子が寝転んでいた

その様子を椅子に座っている男女が笑ってみている 寝転ぶ女の子も同様に、笑っているように見えた

 

あたしの一部を育てたゴミみたいな街がゴミに成り下がってた‬

 

危ねえ、少し生まれるのが遅かったら、あたしもマットレスに座っていたのかもしれない

この世界線に生きるあたしは、その場所で援助交際をしていた

薬の過剰摂取でキラキラして見える街灯に微笑んでいた

確かな不幸せを他人に消費させてお金に換えて、不確かな記憶に涙を流しては、昨日と今日の境目など判らずに生きていた

 

ただ、確かなことは、あたしが今日を生きたこと

そして、同じ今日を生きたあの子たちを見て、自分とは違うと区別したこと

 

不確かなことは、あの子たちが幸せかどうか

そして、あたしは幸せか