あたしの好きを、好きな人に捨てられてしまった
音楽は救いで、あたしの人生で1番頭が上がらない芸術だ
「興味ない」と吐き捨てたあなたは、あたしになにを1番伝えたかったのだろうか
小学生のあたしにパパが声をかける 理科の実験ができるイベントの誘いだった
だいたい実験ができるイベントは駅から遠くて、夏休みに何度もパパと炎天下を歩いた
それが楽しい日もあったけれど、疲れているパパの疲れには気づけず、機嫌が悪いのだと判断して様子を伺いながら1日を過ごして、イベントを楽しめない日もあった
誘われた日は、なんとなく後者を思い出した日で少し面倒に思えた
「めんどくさい」と断るのはよくないかと思い「興味ない」と言った
パパは悲しそうな表情を浮かべた後、時間が経ってからあたしをわざわざ部屋に呼び出した
「"興味ない"は拒絶だよ」
今でも覚えている
自分の中では相手を傷つけない言葉選びをしたつもりだった 返答が間違っていたことに、それを言われてもすぐには気づけなかった
興味ないと言ってしまったら、もう声をかけるのはやめようと相手に思われてしまう
そうしてあたしがこれからの人生でたくさんのチャンスを逃してしまうのはもったいないと、パパはたくさんの時間をかけて説明してくれた
その日から、誘われごとを断る時に「興味ない」と返したことは1度もない
あたしの好きな音楽を好きな人に勧めた
すぐにライブに行って生の音を感じたがるあたしの性格を知っているからか、隙間の時間で聞いてくれていることを教えてくれた
とても嬉しかった
だいぶ先の予定にはなるが、好きな音楽が1日でたくさん浴びられるイベントを見つけた
迷わず好きな人と行きたいと思った
「興味ない」と言われた
前述の通り、興味ない=拒絶だと思い知っているのは今のところ世界であたしだけで、周りの人間が全員パパに呼び止められたわけもなく、英訳したところで"No thank you for me."くらいのものかもしれない
深く聞いてみたら、実際には他に行きたくない理由や今応募する必要性の低さなどを話してくれた
それでもあたしの中で、拒絶されたと感じた心が消えない
確かにあの日パパが言った通り、次の機会にもう1度誘おうと思ったところで自分の中でストップがかかってしまうだろう
あなたの「興味ない」は、あたしには"I don't want to go with you, never. "に聞こえた
その後の話を聞くに他の理由もあったことから、きっとあなたは行かないことへの意思表示のうちの1つだったのだろう
それならきっと今までも同じようなことをあたし以外の人にも言ってきて、たくさんの機会を棒に振ってきたのだと思う
あたしはあなたのことが好きだから、それをもったいないと思うし自分のためにやめたほうがいいと思う
あなたがあたしのことを好きな時、なぜ「あたしがそれを聞いてどう思うか」まで考えて話さないのかがどうしてもわからない
安直に聞こえるかもしれないが、あたしは考えて話しているからわからないのだ
「相手にどう思われるか」という自己呈示よりも、それを聞いた相手はどう感じるかというもっと直接的な部分に目がいかない理由を教えてほしい
自己呈示など、誰にでもできることで、とても浅くて脆いものだと思う
自分が日本語を正しく使えば使うほど、他者に失望させられることが増えてしまう
好きな人と好きな音楽を浴びることは、予定から夢に変わってしまった
あたしの夢は、歳を重ねるごとに小さくなっていく
そんな自分に、興味がなくなってしまいそうだ