あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

Entries from 2023-01-01 to 1 year

ロックンロールは鳴り止まない

マンチーに備えた夜食が用意されていて、部屋は煙草の匂いが充満している 誰にも見せられない状態のあたしが泊まっているから清掃はリネンの交換だけ、灰皿はもう溢れている あたしはホテルに備え付けられたシャワーを浴びて、一段低いところにかけると慣れ…

壊した、壊れた

なにも食べていないはずなのに吐き気がして、深夜にメイクをして露出の高い服を着て車に乗りこむ 何年も前に戻った気がした 気遣いでつけてくれていた暖房は吐き気を悪化させるけれど、あたしはなにも言えなかった 世界で1番大切な人と会う週末だけ、抗うつ…

浮ついた気持ち

一途な女ってなんか憧れる 幼なじみと結婚とか、そういやあたしにも結婚するつもりだった幼なじみがいたな 世の中そんなにうまくは行かなくて、重圧に耐えて目を閉じて、瞬きをしたら歌舞伎町にいた 今思えばあれもこれも犯罪だったけど、それがあたしの青春…

女だから、甘いお酒を少しだけ

スミノフを飲む男なんて男じゃない 日本にはたまたまなかっただけのこのセンスをあたしは痛いほど理解できてしまう 甘くて飲みやすい、瓶に入っているジュースみたいなもの、女が飲む飲み物だ 別にスミノフを飲む日本の男を貶すつもりはない ただ、男ならば…

生きる人間の我儘へ

母方の祖父が死んだ。 三連休が明けた平日の2日間を家族旅行に使う優雅さを全身に浴びながら、1人だけ起きれず汗をかくように急いで温泉に浸かった後、両親から告げられた 何も心が動かない自分を、少し冷たく思いながらも「自分らしい」と言い訳をして、朝…

PRAYING XXX

キラキラのクマの形をしたスマートフォンのケースを長い爪が大事そうに抱えている きっと今あたしが目の前にいる誰かなら、あたしのことをそう表現するだろう キラキラは今日も、女の子のかわいいを担ってくれている 心の中で、ずっと考えていた気がする "…

健やかなる次回

気持ちが落ちている 右肩下がりに不安定な状態、なんてものではなく、ストンと音がして底に来てしまったかのような感覚である どう足掻いても摂食障害がつらいという結論に至ってしまう あたしが何度吐いても過食衝動に襲われる人間だと知っている人は、あた…

小さい

1年を2つに分けるとき、あたしは今が転換期である 久しぶりの感覚を味わいながら、少しだけ新しくなるあたしに、少しだけ期待する 新しい手帳を買って、書きやすいボールペンを買った この手帳が6月に機能していないことも、家に同じブランドのボールペンが…

命尽きる魔法

仕事が終わっていないことはわかっていた 納期が過ぎていることくらい、あたしが1番知っている それでもやる気すら起きなくて、ひたすらに笑えるわけでもない動画を見続けていた 画面を見つめていると、あたしの好きだったアイドルがネタにされていた その人…

大嫌いな女との再会

あたしはずっと、自分の顔が嫌いで仕方なかった 中学生の頃に通っていたあるスポーツのスクールで選手コースに入った そのとき身体を鍛えていた周りとは到底体力の差があった 太っていると言われて、レッスンの厳しさのストレスも相まってあたしは帰り道泣き…

嫌いな味のグミ

睡眠薬を絶って丸3日が経とうとしている なぜか眠くなって寝た日から、なんとなくやめて今日だ 確かに昨日は「続けられたらいいな」という意識のもと意図的に飲まなかった ただ別に、誰にも強要されていないので、飲みたい日が来ればいつでも飲もうと思う 寝…

特別な錠剤

季節の変わり目ともいえないのに鼻が詰まってしまった ジャンキーあがりをいいことに、いつもより熱が高ければ風邪薬を飲むし、1度でも咳をすれば咳止めを飲む 量は規定通りなんだから悪いことはしてないし、なによりお前に関係ない ただ、今回の鼻詰まりは…

お洒落の裏側

毎日のようにオンラインショッピングで買ったものたちが大量の箱で届く 両親は心配しているが、あたしが悪い そんなことはわかってる でもあえて、買ってくれる男に買ってもらっていいならばとっくにそうしている、とだけ吐き捨てて、昔の話をしよう 季節が…