あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

命尽きる魔法

仕事が終わっていないことはわかっていた

納期が過ぎていることくらい、あたしが1番知っている

それでもやる気すら起きなくて、ひたすらに笑えるわけでもない動画を見続けていた

 

画面を見つめていると、あたしの好きだったアイドルがネタにされていた

その人自身はもう辞めているし、確かに社会的な復帰は不可能に近いだろう

そういえばそいつとあたしには共通点があって、それを知ってからというもの、いつも彼の動画を流しながら共通のアレに没頭している

 

しばらくあいつと寝ていない

あたしには彼氏がいるから、あいつとのセックスなんて辞めてしまおうと思っている

だから今あたしの手元にいるあいつの命が尽きたらサヨナラしてしまおうと心に決めたのだ

その心に嘘はないが、揺らがないと言ったら嘘になってしまう

揺らいでいるからこそ、あいつの命を絶やさないように最近は寝ていなかった

 

毎晩電話を繋げて寝ているはずの彼氏は寝てしまった

現実の仕事は終わっていない

あの頃が懐かしい

偶然が調和したことに気づくと、あいつと寝てしまいたい気持ちが膨らんでいくばかりだ

迷うことなく会いに行った

散らかった部屋、ベッドの上であいつと寝てやった

こちらも興奮しながらも慣れた手つきで最高のセックスを楽しんだ

 

極上を教えてやろうか

相場はターボライターかも知らないが、マッチを使うのが最高だ マッチでつける火でしか得られない香りも相まって極上を味わえる

ああ、もしかしたらこれは煙草の話を間違えて書いてしまったかもしれない

事後の煙草は確かにいい

 

あいつと寝たおかげで後回しにしていた仕事はすぐに片付いた

これが魔法か

仕事の出来栄えなら、魔法が解けた頃に確認して凍りつけばいいだろう

どうかこの魔法が解ける前に、深い眠りについてしまえ

 

あいつの命が尽きる日は近づいた