年の瀬は慌ただしい ように見せかけて、自分が社会に溶け込んで生活している人間だということを必死に証明している時期だ
だいたい忙しい人は年中忙しいし、その逆もまた然り
忙しいと喚く人間は、どうせろくでもない
年末という少し特殊な時期を迎え、重い憂鬱を悟る
冒頭の文章は、昨年末に書き残した文章だ
数分前に、年末という時期があたしは嫌いだと、ここに記そうとしたばかりだ
ああ、1年前となにも変わっていないのか
もう昨年末の記憶はないけれど、平日に終日働いている人たちが嬉しそうに年末年始の休暇を過ごしている様子を見ると、自分はその社会から仲間はずれにされただけの価値のない存在だと錯覚する
昨日まで幸せいっぱいだと思って生きていたはずなのに、今では幸せそうに生きるふりは疲れてしまったと感じる
不意に、死にたくなった
今まで生きてきた中で、過去を引きずって未来に期待なんてしてこなかった いつだって描いてみた輝かしい未来は、ただの虚構だった
今年はあたしの人生が変わった年だ
自傷をやめて、好きな人と歩んでいくたくさんの未来を描いて笑っていた
突然の変化に周りは驚いたけれど、1番驚いたのはあたしだ
死にたいだなんて思わなくなって、悩みは寝付けないことややるべきことなど、生活に溶け込んだ具体的なもの そのどれもが、この人生を終わらせてしまいたいと思うほどの大きなエネルギーを持たない
その代わり、うまくいっていない現実からは目を逸らすようになった
身体が綺麗になった分、心が汚れた気がする
息苦しいから、もうやめようか
生きることがこれくらい簡単なことならばよかった
新年だから何かをはじめてみようと試みるのは苦手だ
中学生のあたしに父親が、「新年だし日記をつけはじめたら?」とノートをくれたことがある
当時プロを目指す厳しいコースでテニスをしていたあたしを気遣って、トレーニングや体重も記録できるノートだった
なんだか嬉しくて、久しぶりに体重を測ってノートをつけ、たくさんの目標を書いた
見かけによらず、続けることは苦手ではないあたしは、毎日それを書き続ける
そのノートに夢中で寝る時間が少し遅くなるあたしを見て、母親は険しい顔をしていた
意識して生活をしてみたら、体重は簡単に減った 増えてしまった日は字が汚かった
それでも体重はいつか停滞する
数字に縛られて苦しい自覚を持ちながらも、日記をやめたら自分を嫌いになるからと、毎日書くことをやめなかった
あたしは、拒食症になった
新年からなにか始めるだなんて、三日坊主だったと笑い飛ばせるような性格の人間がやるべきだ
病的なほどに完璧主義のあたしには向いてない
そういえば数時間前、帰宅した直後に話しかけてきた母親に向かって「家になんて帰ってこなきゃよかった」と叫んだ
啜り泣く声に、聞こえないふりをした
悲しくなってしまう
もうあたしには、腕を切り刻む勇気すらない