身体いっぱいに息をする
肺に入れた空気の代償に、喉が焼けた感覚に陥り、息を止めてチューハイを流し込む
新鮮な空気は特別に美味しい
あるだけ食べ物を食べて、あるだけ酒を飲んだ
そんなことを朝方までしていたものだから、言うまでもなく起きたら胃がもたれていた
こんなことはもう幾度となくしてきたのに、今すぐにでもその感覚に堕ちてしまいたくなる
昨日の自分が残した酒を、朝のコーヒーがわりに飲みながら、今日という新しい1日に足を踏み入れた
一般的な自傷行為として誰にでも伝わるものとすれば、リストカットがあるが、今日はその延長の話をしよう
今となっては恐ろしい話だが、つい2週間ほど前までのあたしは、自分の腕を縫っていた
小学生時代に買ってもらったソーイングセットを探し出し、好きな色の糸を通した針を、自分の腕に縫い付けていたのだ
その時は、お裁縫をしている可愛らしい女の子のイメージで、少しだけ自分が好きになれた
もしあなたが健常者で、ここまでの話をなんの共感性もないものと捉えているのであれば余計な話にはなるが、縫った跡は、深く切った直線よりもずっと色濃く残ってしまう
迫りくる夏に、着たい服が着られないのは体型のせいだけじゃない
海やプールに自分から行こうとしないのは泳がないからでも嫌いだからでもない
自分の腕を晒す勇気もなければ、他人の綺麗な傷のない左腕に嫉妬する自分に耐えられないからだ
夏が来る
そう言えば今日も長袖のカーディガンを羽織っている