あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

住みにくい部屋

大好きな人に、今のあたしを怖いと言われた

だから、「距離を置きたい」と

 

鞄を開けるのが怖かった あなたといた時の思い出が出てきてしまう気がした

案の定、あなたがクレーンゲームで取ってくれたあたしの好きなキャラクターのぬいぐるみと、一緒に飲んだキレートレモンの瓶が出てくる あなたは男らしく一気に飲み干していたけれど、その横顔に見惚れていたあたしにはだいぶ炭酸が強くて、口をつけて終わった

一晩たってもう一度飲んではみたけど、まだ炭酸が強くて飲みきれなかった

帰宅してこの文を打ちながらようやく飲み干せたこの瓶を、あなたを思い出せる気がして捨てられない

 

文句を言いながら片付けてくれたあたしの部屋に荷物が増えて行く

片付ける気力が起きなくて、あとあなたが何をどこにしまったのかわからなくて

近すぎる距離は置こうとしたところで、現実問題離れたい人が使うわかりにく台詞だと今は思う

氷を入れたコカコーラなら安易に飲み干せる

今夜の魔法のステッキだ

 

自分のもののように掛けられているあの服は彼のものだし、ベッドであたしを毎日待っていてくれるクマのぬいぐるみは、彼のものだけど2人のものみたいな感じで、部屋のいたるところに彼との思い出が詰まっている

 

本当にびっくりした

今食べているお弁当は彼があたしの部屋で寝ている時にお腹が空きすぎて温めて食べたものだ

そして時間を見ればちょうど2時過ぎだ

「夜中の2時にお腹が空く子だもんね」とあなたが笑っている あなたがまだあたしの中に大きく存在している というよりも距離を置きたいだけで離れたいだなんて言われていない

 

そういえば「距離を置きたい」は「あなたと離れたい」だ、と言うようなことを書いたばかりだが、理由は読者が自由に読み取ってほしい あたしが都合の良い脳内処理をしていたり、人は文章を書いているうちにも思考が変わり続けるのか、それとも全て虚構なのか

 

ああ、このブログは絶対に2時台のうちに書き終えよう

 

俺ずっと好きだったんだよ でも色々なことを知ってその気持ちが消えたんだよ

その聴き慣れたあなたの声は、電話越しでも、怒りの声でも、きちんと彼の深い悲しみが痛いほどに伝わってくる声だった

気持ちが消える要因のうちの1つだったリストカットは、あたしが彼に結婚してほしいと言ったから、自分も少しでもあなたに近づこうとやめた プロポーズした責任を伴うケジメだ

 

彼はすぐにホテルに行きたがるあたしを批判した

楽しいデートなんだから、毎回行く必要ないじゃんどうして?と聞かれた

痛いほどわかってしまった

あたしはセックスでしか認められたことを確認できないから、「楽しい」だけで満たされる彼と「楽しい」と同時に「承認」を得られないと生きていけないあたしは毎回ホテルに行かないと不安になる

好きじゃない人と寝た帰り道の虚無感を知っているからあなたとしか寝たくないけれど、あなたのことが好きだから他の男には抱かれたくない、けれど認められていないと思うから、あなたに会う日はセックスであたしを認めてほしい

けれど他の認められ方を知っている、あるいは自分で自分を認める方法を知っているあなたからしたら、あたしがセックスに固執している意味などわからないでしょう

 

そういえばあなたが寝ている横でもこのお弁当、鼻に米粒が入って苦しかった そこまで一緒かぁ

またも随分と苦しい恋だと思う

恋より愛の方が簡単だ