あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

生きる信号機

またかよ、と自分でも思う

世界中の全ての人間が敵に思えて、夜中に突然家を出た

横断歩道の青信号が、自分を認めてくれている気がした 次の瞬間点灯して赤くなった様を見て、やはり世の中の全てが敵だと思い直した

薬の知識が下手にあったせいで、死ねないとわかっていたけれど好きなだけ薬を飲んだ

認められなかった街で買った酒で流し込んだ

 

生きててよかったことなんてない

正確に言えば、それを考えているときに浮かぶ代物ではない

強いて挙げるとすれば、世の中の穢らわしさを体感できることだろうか 光がある限り影があり、暗闇がまた汚いものを創り出す

 

わかっていたけれど死ねなかったあの夜の記憶が不意に蘇る

認めてくれた青信号も、拒まれてしまった赤信号も、脳裏に画として焼き付いている

 

服毒自殺なんてするもんじゃないと人間様は言うでしょうが、あたしはすっかりあの夜の記憶をなくしてしまったからこそ思い出して辛くなる要素すらなくなった

信号機の色の承認と拒絶だけが残った夜だった

 

だからどうってことは別にないけど