あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

殺し屋の資格

久しぶりに自室で夜を迎えている

嫌なことを目の当たりにすると逃げる自分がいて、逃げている現実は痛いほどわかっている 逃げた自分を嫌いになって、消えてしまいたくなる

そんなことはたまにあるくらいでいいのに、立て続けに起こってしまった 嫌なことは重なると慰めてくれる人もいるけれど、その人たちにはここまで重なったことがあるのかどうかを聞いてみたい

 

一通り服を買い替えた

あたしがいつも着ている服は、自分らしくないというか わざと偶像の自分を演じるためのコスチュームだ 勘のいい誰かに醜い自分を見透かされることが怖くて仕方ない

そんな自分にも飽きて、今度はこんな人に擬態しようと買い替えたのだ あくまでも自分的に、だけれど、色味のある"男が好きそうな女"から、"男が近寄りがたい女"をイメージした

これはあくまでも擬態する対象に対してあたしが抱いているものだけれど

 

どうでもいい話を聞いてほしい

数日前、急にお金が欲しくなった 高校時代のコネクションをフル稼働させて殺し屋をやらせてくれと頼み込んでまわった ほとんどの答えは未経験の女は使えない、だった しょうもない法律に縛られて、なんとなく誰かを裏切るのが怖くて、人を殺めてこなかった自分の人生が憎かった

 

自分でも不可解なほどに病的な行動が増えている

ホテルに連れ込まれた男が突然気持ち悪く思えたから、服も脱がずに帰れと言った 性欲に負けてホテル代を出して密室に連れ込んだのにも関わらず寒い外に放り出される男は涙目でシャワーを浴びに行った

音が聞こえた瞬間に男のリュックを漁りに漁った チャックの多い鞄で財布は見つからなかった そりゃあ、殺し屋もできないなと思っただけで罪悪感のかけらもなく、ひたすらに自分への虚無感に襲われた

 

高級ブランドと言われる店で値段も見ずに買い物をして、気分が良くなるわけでもなくお手洗いに向かうと忘れ物があった

これ以上先を話す気にならないのも、きっとあたしが殺し屋に向いていない理由かもしれない

 

誰かに愛されたくなったから、今年の誕生日は盛大に祝って欲しい あたしはそういうタイプの女が大嫌いだから誕生日を教えないタイプなんだけど、そんな気分だ

でも自分の誕生日が来るまでこの社会に耐えろだなんて難しすぎて、今すぐあたしだけを認めてくれる会を開いていただきたい それが終わったら消えるから

 

幼馴染が消えた

正確に言えば、あたしの前から姿を消した

連絡が取れないわけじゃなくて、今は放っておいてくれと言われたけれど、あたしが頼るのが怖くて落ちるところまで落ちた話をした時に、俺に言えよと呟いた後に、なんの力にもなれなかった自分が情けないと言っていた癖に、いざ自分が苦しい時は姿を消すのかと思うと、あの時理解できなかった"情けなさ"を痛いほどに感じる

ずっと待ってるからいつでも帰ってきて

 

なんだかよくわからないけれど、自分を曝け出してひたすらに誰かに甘えてみたかった