あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

真赤

ラメを意識して黒が映えるようなメイクをした いつもより濃くて、誰かに好かれたい一心で顔を作った

鏡に映る自分はメイクが濃いだけの、かわいくない自分だとも思えないような顔をしていて、作りものの自分に耐えられない辛さが滲み出ていた

赤ネイルをしたくなったから、赤のマニキュア

を落としてフェイクネイルをつけた

悲しい 今日のあたしはかわいくない

 

なにもできていない現状くらい誰よりもわかっているはずなのに何もできない自分は後ろ指を指されて生きている気がする

悪いのは全てあたしだから、誰かを責める気なんて毛頭ないんだけれど、悪いとわかっているのだから、もうここは放っておいてほしい

 

腕を切ると血が流れる

その赤色が映えるネイルのデザインを探そうか

そういえば赤の爪に魅力を感じて初めて塗った時は、初恋の人の彼女への嫉妬で「お前の血だぞ」と呟きながら塗っていた

うまく行かない人生を送っていると、忘れた方が幸せになれると蓋をしたはずの記憶ばかりが

蘇る

 

涙も流れない穢れた人生を薬漬けにして血を流して男の上辺だけの承認で満たしてはきたものの、それだって限界がある

キスマークという内出血も、心の叫びのリストカットも、裏の想いが交錯しながらもファッションと化している赤のネイルも、ピアスという傷跡に残された男たちの想いも

もうなにをしたところで孤独である現実が変わらない

 

頭を働かせると現実を見なくちゃいけなくなるし、心機一転やり直そうとしても身体中の傷跡が邪魔をさせたりもする

 

このご時世と今年の冬の寒さが、またあたしを独りぼっちにさせていく

 

かわいくなりたかった 愛されてみたかった

でもきっと愛されても、痛かった