あたしとお前といつかのあたし

精神科のロビーで二度見される女

届かない

死にたいと思う

確かに思ってはいるけれど、ほんとうに死にたいわけではない

それはただ1人、大好きな人のおかげであたしの気持ちから「死にたい」を消してくれたと思っている

 

「生きるのもくだらないからもう 何もかもを壊してしまいたい でも死にたいわけではないからさ せめて笑っていたくて」

(フリーター/シンガーズハイの歌詞より引用)

今のあたしには、この表現があまりにもぴったりだ

 

鬱転してずいぶんと経った

身体は思うように動かない

起き上がって生活を始めようとするのに起き上がれず、仕方なく横になったまま時間が経つのを待っているつもりが、意識がなくなってしまう

決して眠かったわけではないから、目が覚めた時に自己嫌悪に陥る

とにかく思うように身体が動かないことがひたすらに情けなくて悲しい

 

あたしから自殺の選択肢を消してくれた彼氏に感謝をする日だけではないのが悲しい現実だ

その選択肢を奪われてしまったと感じる日も多くある

ただ、それでもあたしにとってただ1人、大好きな彼氏だからこそ彼を責めるような生き方をしたくないと思う

そんなことばかり考えていたら、彼に本音を話せなくなっていくばかりで、そんな自分を嫌いになるループが続く

 

彼が休みの日に、友達と日帰りで遊びに行ってくるね、と言った

その休みの日は、あたしも何もない休みの日だった

彼に「助けて」と言えない日々が続く中で、それを彼は「ならきちんと話そう」と言ってくれた

けれど、身体も動かない状態のあたしを置いて友達と遊びに行くと聞いて、また話を切り出しにくい状況を作られてしまった、と思った

期待したあたしがバカだったよ、そのくらいわかってはいるけれど、自分の中でうまく消化はできなくて、「行ってらっしゃい」を素直に言えなかった

彼はあたしがSOSを出せずに苦しんでいることには気づかず、「どうして遊びに行くとそうやって文句を言うんだ」とあたしを責めた

もう自己嫌悪のキャパシティは超えていて、ショックを受ける気持ちもコップからはとっくに溢れ出ていて、自分が生きていることを実感する手段なんて自傷行為くらいしかなくなっている

ただそれを伝えたところで、彼が遊びに行けばあたしは彼を恋人失格の男だと思うだろうし、彼が行かずに話をしようと言ってくれたとしても、「俺の楽しみを奪っておいて」と憎まれるのが怖くて本音を話すことができないと思うのだ

とにかく情けない女で、彼氏に愛されない理由もきっとそんなところにあるのだろう

 

最近の会話は的外れな返答ばかりだ

彼氏に相談できないけれど、他の人に相談して、万が一理解してくれた日には「彼氏はわかってくれないのに」と思ってしまう自分が嫌だからたまには話を聞いてほしいと打診した

すると、「他の男に相談しなよ、ただ好きな人ができたなら浮気なんてしないで俺に言ってね」と言われた

あたしの話をどう受け取ったのかはわからないけれど、愛されていないことだけはわかってしまった

 

飲めるだけの睡眠薬は飲んだのに、孤独に耐えられずに眠れない日々が続く

自分のことなんてもう、何もわからなくなってしまった

なぜか今日も幸せで

不思議な人生だと思う

あたしの幸せの定義は「幸せかと自分に問わずとも幸せだと感じること」と、非常に抽象的なものだ

だからこそ理論上「幸せになりたい」を実現するための努力は1つもできない

でもそんな人生を薄っすらと好きだと思える日々を過ごしている

 

自分を客観視せずとも、しばらく働くこともできずに人生で初めて借金をした

高校の頃に「あたしの人生の1番大事な軸はお金じゃない」と気づいたあの日があっても、資本主義の国で生きる上で自由に使えるお金がないことは、精神的に負荷がかかることを思い知った

それでものうのうと生きている自分を変な生き物だと思いながらも好きだ

 

寒い夜に彼氏と夜中まで遊んだ夜、彼氏のバイクの運転で寒空の下を走って帰る

おしゃれを捨てて寒さ対策などしてみたものの、ブーツやデニムの生地を平気で貫通してくる寒さだった

それでも、大好きな人と楽しい時間を過ごして、寒いねと笑い合えることが幸せで仕方なかった

確かに身体は冷えているけれど、何も言わずに暖かいアウターをあたしに貸してくれた彼氏はきっともっと寒い思いをしている

最高の男だと、夜空に少し胸を張ってみた

 

明日は休みだからと中途覚醒をしない薬を口に含んだ

ホルモンバランスはガタガタで、睡眠薬はグミとチョコレートを食べながら摂取した

夜中にお菓子を食べていることも、歯を磨かずに睡眠薬を飲んだことも、それでもお菓子を食べていることも、何も許せない

アラームもかけずに寝落ちをして、そのまま寝られればせめて幸せなのにすぐに起きてしまった

中途覚醒が嫌で薬を飲んだのになんの意味もない状況にため息すらも出なくて、二度寝をするにも目が冴えてしまった

諦めて時間を潰していると、電話を繋いでいた彼氏があたしの名前を呼んだ

怖い夢を見て起きてしまったと、少しの時間話した

彼はそんな時もすぐに寝られるらしくて、もう寝てしまったけれど、あたしは怖い夢を見て起きたとき、1番に名前を呼んでくれた幸せを噛み締めている

 

あたしはこのままこの人と一緒にいられれば幸せなのだと改めて思う

彼があたしといることで幸せになれるために、お金を稼ぎたい

あなたのためならできることがたくさんあって、あなたといる時間を心から幸せに思っている

 

社会的な地位なんてもうないようなものなのに、この人といたいと思うだけで生きようと感じられるだなんて、愛の力強さは偉大だ

興味と夢と、

あたしの好きを、好きな人に捨てられてしまった

音楽は救いで、あたしの人生で1番頭が上がらない芸術だ

「興味ない」と吐き捨てたあなたは、あたしになにを1番伝えたかったのだろうか

 

小学生のあたしにパパが声をかける 理科の実験ができるイベントの誘いだった

だいたい実験ができるイベントは駅から遠くて、夏休みに何度もパパと炎天下を歩いた

それが楽しい日もあったけれど、疲れているパパの疲れには気づけず、機嫌が悪いのだと判断して様子を伺いながら1日を過ごして、イベントを楽しめない日もあった

誘われた日は、なんとなく後者を思い出した日で少し面倒に思えた

「めんどくさい」と断るのはよくないかと思い「興味ない」と言った

パパは悲しそうな表情を浮かべた後、時間が経ってからあたしをわざわざ部屋に呼び出した

 

「"興味ない"は拒絶だよ」

 

今でも覚えている

自分の中では相手を傷つけない言葉選びをしたつもりだった 返答が間違っていたことに、それを言われてもすぐには気づけなかった

興味ないと言ってしまったら、もう声をかけるのはやめようと相手に思われてしまう

そうしてあたしがこれからの人生でたくさんのチャンスを逃してしまうのはもったいないと、パパはたくさんの時間をかけて説明してくれた

その日から、誘われごとを断る時に「興味ない」と返したことは1度もない

 

あたしの好きな音楽を好きな人に勧めた

すぐにライブに行って生の音を感じたがるあたしの性格を知っているからか、隙間の時間で聞いてくれていることを教えてくれた

とても嬉しかった

だいぶ先の予定にはなるが、好きな音楽が1日でたくさん浴びられるイベントを見つけた

迷わず好きな人と行きたいと思った

「興味ない」と言われた

 

前述の通り、興味ない=拒絶だと思い知っているのは今のところ世界であたしだけで、周りの人間が全員パパに呼び止められたわけもなく、英訳したところで"No thank you for me."くらいのものかもしれない

深く聞いてみたら、実際には他に行きたくない理由や今応募する必要性の低さなどを話してくれた

それでもあたしの中で、拒絶されたと感じた心が消えない

確かにあの日パパが言った通り、次の機会にもう1度誘おうと思ったところで自分の中でストップがかかってしまうだろう

あなたの「興味ない」は、あたしには"I don't want to go with you, never. "に聞こえた

その後の話を聞くに他の理由もあったことから、きっとあなたは行かないことへの意思表示のうちの1つだったのだろう

それならきっと今までも同じようなことをあたし以外の人にも言ってきて、たくさんの機会を棒に振ってきたのだと思う

あたしはあなたのことが好きだから、それをもったいないと思うし自分のためにやめたほうがいいと思う

 

あなたがあたしのことを好きな時、なぜ「あたしがそれを聞いてどう思うか」まで考えて話さないのかがどうしてもわからない

安直に聞こえるかもしれないが、あたしは考えて話しているからわからないのだ

 

「相手にどう思われるか」という自己呈示よりも、それを聞いた相手はどう感じるかというもっと直接的な部分に目がいかない理由を教えてほしい

自己呈示など、誰にでもできることで、とても浅くて脆いものだと思う

自分が日本語を正しく使えば使うほど、他者に失望させられることが増えてしまう

好きな人と好きな音楽を浴びることは、予定から夢に変わってしまった

あたしの夢は、歳を重ねるごとに小さくなっていく

 

そんな自分に、興味がなくなってしまいそうだ

ロックンロールは鳴り止まない

マンチーに備えた夜食が用意されていて、部屋は煙草の匂いが充満している

誰にも見せられない状態のあたしが泊まっているから清掃はリネンの交換だけ、灰皿はもう溢れている

あたしはホテルに備え付けられたシャワーを浴びて、一段低いところにかけると慣れた手つきでバスローブを羽織る

ここに住んでいるわけではないのに、ここはあたしの部屋だった

2回ではないノックが鳴る

その合図で部屋を開ける時、なるべく無防備に見えるように、ノックが鳴るとバスローブを少し解いて髪の毛を揺らす

男が入ると、わざとらしく髪の毛だけを直して横に座る

夜食は用意されていると言ったはずだが差し入れを買ってくる男は、身体目当てだという気持ちを少しでもなにかで薄めたいのだろうか

そして自分用と言って買ってくる飲み物は、なぜかどの男も甘い炭酸水だった

靴を脱ぐとそこにはきちんと約束のものがある

知らない街だから、死んでもいいやと思いながら一息に吸い込む

空いた穴を塞いでも愛と呼ぶほど馬鹿ではない

音楽が、鳴っている

 

1人きりの夜をどう過ごすのかと不思議に思っていた

今のあたしには失うものがあって、その1番を占領する彼氏をこれ以上壊さないために自分を削ぎ落として生きている

毎日起きたら死にたくて、何もできない自分が毎日嫌いで、悪夢から醒めた現実が悪夢より酷いものだったなんて洒落にもならない人生が出来上がってしまって

それでも幸せな人生を歩んできた彼氏を不幸にしてしまうくらいなら、不幸な人生を歩んできたあたしが奈落の底に堕ちればいいと思っている

あたしが見てきた底たちよりはきっとまだマシだから、大丈夫

寒気がして湯船を張る、その前にたまには1人きりで楽しんでやろうかとマッチ箱を取り出す

湯船で熱った身体にバスローブを羽織る

なぜか湯船はいつもと変わらず熱くもなかった

音楽は鳴らない

音楽が、鳴らない

 

俺たちはロミオとジュリエットだねと、1週間だけ恋人同士になった男を元彼と呼んでいいのかはわからないが、確かに愛している男が横にいる

こいつがいなければ、あたしは誰からも逃げずに人生を過ごせた気がするし、同じようにつまらない人生を送っていた気がする

お金に困ることなんてない癖に、コンビニのパンをおいしそうに食べていた

近所のカレー屋なら顔が効くからと、持ってこさせたカレーとナンのセットは、確かにものすごくおいしくて堪らなかった

月が綺麗だよ、とお前がつぶやく

それがわざとなことを知っていても、どうしても嬉しかった

携帯のストラップよりも記憶に残る、たくさんの言葉をくれた

寒いねと言うと、吸ってるから仕方ねーだろとテキトーにあしらわれてしまった

帰り道、お前の家は近いようで遠いなと思いながら電車で思い出の曲をかける

音楽が、鳴っていた

壊した、壊れた

なにも食べていないはずなのに吐き気がして、深夜にメイクをして露出の高い服を着て車に乗りこむ

何年も前に戻った気がした

気遣いでつけてくれていた暖房は吐き気を悪化させるけれど、あたしはなにも言えなかった

世界で1番大切な人と会う週末だけ、抗うつ剤が手放せない夜が続いて、季節は何度か死んでしまった

そんな世界なら、世界ごと壊してしまおうかと何度も考えた

心の1番深いところに触れられてしまったら息ができなくなってしまうから、好きな曲じゃなくて流行りの曲を聴くようになった

 

大切な人を壊してしまった

いや、また、壊した

寂しそうに「ハサミなんか握っちゃってさ」と笑ったあなたが笑っていないことくらいわかる

助けなきゃ、守らなきゃ、あたしのせいだ

気づいていたのになんの言葉も出なかった

あたしらしくないとか、彼女なのにとか、色んな声が聞こえる気がするのに、脳が言うことを聞かない

心の核に触れちゃいけない約束は、あっという間に破られてしまった

 

終礼中に言われた「あたしの変化に気づかない?」の一言から、ロッカーの前でそっとセーターを捲ったあなたのあの日の行動をあたしは忘れられない

泣きじゃくるあたしに色んな人が声をかけてくれたけど、誰にもなにも言わなかったことと、「そんなに泣かないでよ、あたしがやっただけ」と言ったあなたの孤独な俯き顔は、何年経ってもたまにあたしを刺すために蘇ってくる

 

眠れない日々が続いて、眠れない自分と何時間も戦ったのに結局眠れなくなって、気を紛らわすために仕事に行くあなたに声をかけていた

それまでどれだけ泣いていても、心配させないように何事もなかったような声を出しているつもりだった

「俺のこと起こしてくれなくていいから寝なよ」

昔のあたしなら言い返していた

あなたのために起きてるわけじゃない、眠れなかったあたしの気持ちがお前にわかるか、などと言っていただろうか

寝ているかわからないけど朝になっているんだよね、と言ったあなたを見てうらやましかった

そもそもあたしにはそれがデフォルトだから、少しはあたしの気持ちがわかったかな、なんて意地悪を言ってしまった気がする

でも、それでも、夜に寝て朝に起きて、きちんと仕事には行っている、社会に溶け込んで生きているあなたが今でもあたしはうらやましい

これは言えなかった 言ったらきっと、心の核に触れてしまうから

 

壊した原因を、こんなところに深く書くつもりは今のところない

ただ、何度も話し合いをするうちに毎回思うことは、あなたはさぞ幸せな人生を送ってきたのだということ

そんな幸せな人生を送ってきたあなたに、自慢の彼女だって言われて嬉しかった

自慢の娘になれなかったあたしを、大好きなあなたの自慢にしてもらえるだなんて夢にも思わなかった

 

あなたには話しきれないほど、あたしの過去は暗い

あたしが強く見えるのは、それを1人で乗り越えてくるしかなかったから

つらい時にあの男を頼るのは、あたしよりあいつの過去の方が暗いから、気持ち悪いほど的確にあたしの不快を言語化してくれるから

 

やっぱりあの日に死んでおけばよかったと思う日が多すぎて、もう思い出せないや

なにも覚えていないあたしを非情な目で見つめるあなたを見て毎回心が痛むの

忘れなきゃ生きていられないことばかりで

 

あの歌を聞くと思い出す

リリースされた当時の彼氏の家にほかの男が車で来て、彼氏が寝てることを確認しつつもスーパーに行ってくるとLINEを打って、その男の車に乗り込んでそこらへんの路上でセックスして

部屋戻る前に、気づかれないように全身に付着したアスファルトの粒を落としてゆっくり戻ったことまで、トラウマとして身体と精神が覚えている

位置情報取られてるからこのスーパーでいい、と満足したであろうその男を車に乗せて帰してから、その曲を聴きながら当時の彼氏の家まで歩いて帰っていた

家は、その道を真っ直ぐ行けば帰れたんだ

 

大好きなあなたの隣でそんなことを思い出したくないから、本当はすべて上書きしてほしいけれど、こんな酷いことをされたの?と同情みたいなセリフを吐かれるのが怖くて言えずじまいだ

たまに思い出してしまうこの感情や感覚を、なるべく思い出さないように、記憶が飛びそうな薬を選んでは口に放り込む

 

過去のことなんて思い出したところで、なに一ついいことなど、あたしの世界では常識なの

記憶飛ばさないと、生きられないから

だから最近、話し合ったり壊れていくあなたを見たりする毎日が続いて、毎朝起きたら死にたい

死にたいから抗うつ剤を朝イチで飲んだ1日が幸せなわけないけれど、その中からあたしは幸せを見つけて生きてるつもり

 

「ハッピーを探すほど寂しいことなんてないだろ」

眠る前にあなたが言ったこの言葉も、あたしには刺さってしまった

あたしが毎日してることは寂しいことなんかじゃない

あなたと生きるために、毎日してることなのよ

 

あなたを壊してしまったあたしは、とっくに壊れてる

浮ついた気持ち

一途な女ってなんか憧れる

幼なじみと結婚とか、そういやあたしにも結婚するつもりだった幼なじみがいたな

 

世の中そんなにうまくは行かなくて、重圧に耐えて目を閉じて、瞬きをしたら歌舞伎町にいた

今思えばあれもこれも犯罪だったけど、それがあたしの青春なんだ

 

未成年だったあたしが知り合いの男に車で連れて行かれたホテルでシャワーを浴びて、これ着て出てきてって言われた制服みたいなコスプレ着てドアを開けたら知らない男が5人いた

5人の男があたしを輪姦してたけど、ふと目を開けた時、その男の中の左手に結婚指輪がはめてあって

そんなことは日常茶飯事になって、あたしは結婚が怖くなった

 

浮気はされる側が悪いよ

隙を与えたほうが悪いんだ

世間はする側を責めるけど、それは世間が馬鹿なだけ

 

檻に閉じ込められた犯罪者が脱獄した時、責められるのはほんとに犯罪者?

目を離した刑務官だって悪いでしょ

 

あーあ

こんな未来になるならあの時死んでおけばよかった

女だから、甘いお酒を少しだけ

スミノフを飲む男なんて男じゃない

日本にはたまたまなかっただけのこのセンスをあたしは痛いほど理解できてしまう

甘くて飲みやすい、瓶に入っているジュースみたいなもの、女が飲む飲み物だ

 

別にスミノフを飲む日本の男を貶すつもりはない

ただ、男ならば、女ならば、という考えを多様性を盾に否定するこの社会で、今一度考え直したい夜だ

 

あたしは12年間女子校に通っていたから、女同士の恋愛はきっと人よりたくさん見てきたし、あたしにだって女しか好きになれない時期があった

彼女がいたこともあったし、とにかく男を受け付けない時期で、ベッドに寝そべりながらなんとなく読んだ恋愛漫画も男という存在が気持ち悪くてすぐに読むのをやめた

iPhoneを手に持ったまま仰向けになる ロフトベッドで天井を見つめながら、少しだけ絶望のような味がした

この先あたしは結婚とか出産とか、まともなセックスもしないで世間から冷たい目で見られて生きていくのかと、当時の恋人の顔を浮かべながら考えた

なにより、彼女にも同じような境遇で生きていくことを強要してしまう気がしてものすごくつらかった

結局時が経てば男という存在への嫌悪感も消えて、今の恋人は男だし、このまま結婚して世間ではジェンダー的な意味では多数派の分類に属するのだろう

ただ、この経験がある以上、他人の性的嗜好には特に何も思わないし、むしろ同性同士の方がデートが楽しいことも、セックスに痛みが伴わないことも知っている

性差による違いなどに頭を悩ますこともない同性同士のカップルは、あたしの目にはとても美しく映る

 

その上で、性的嗜好と男女特性論をあまりにも混ぜて考えすぎている現代の日本社会にはうんざりだ

前提として、現時点におけるLGBTの分け方は性的嗜好に分類されるものだと考える

性自認や性愛対象を中心に分類しているからに他ならない

男女特性論は社会における性差に基づく性別役割分業に近い考え方であり、男は働き女は家を守るという近代までの考え方だ

現代はジェンダー論の移り変わりの境目に位置し、過渡期だ しかしそんな大事な時期に性的嗜好と男女特性論の区別がついていないような国はもう終わりで構わない

 

あくまで多数派に分類されゆくであろうあたしの持論を展開する

そもそもあたしは他人に強要することは好きではないので全てが主観であり、あたしから見えている風景を言語化するのみだ

こんな注釈が必要になってしまったのも、多様性を盾に頭の悪い人間と声の大きい人間がテキトーに作り上げたこの社会のせいだと思う

 

さて、まず性自認と身体的性別がどちらも女のあたしからすると、女であることは「変えられないこと」となる

その結果、女という生き物を楽しむことが最優先だ

自分の思う女らしさを突き詰めて服を着たいし、ネイルができない職につく気もない

もちろん生理は実害が多いイベントなので、全肯定できるものでもないが、低容量ピルの服用により1回が3日間で終わり、生理期間がカレンダーに書き込めるほど明確にわかるように調整している

食欲が大幅に増大するか減少するかはその日にならないとわからないが、明日から生理だとわかっているので前日から鎮痛剤を飲めるし、その期間に向けて薬や食料の準備ができる

血の量も予測できないからこそ月経カップを使っており、ナプキンは基本的に使わないスタイルだ

ここまで調整できると、「月1の体重気にせず食べていい期間」くらいに思えてかなり楽だ

ただ、自分が女だからこそ、これが通用したのはたまたま自分の体質と飲んでいるピルの相性がよかったからだということを自覚しているので、相手が誰であろうと生理に苦しんでいる女の子には「自分には理解できない苦しみがある」という気持ちで話ができる それでこその対話である

 

話を戻すと、自分の力では変えられない性別を楽しむ上でネイルやメイクはもちろん、フルパワーで楽しむ

当たり前に男のための美容ではない

これは無意識下の話だが、ネイルやメイクをする度に「女でよかった」と自分を肯定している日があるのではないだろうか

ネイルもメイクも、施した後は強くなれる気がする 女に生まれた自分を強くする武器のうちの1つであり、100%自分のための作業だ

 

ちなみに女には椎名林檎という最強のケツ持ちがいる

あたしたちのバックには椎名林檎がいて、女である自分を肯定し続けてくれる

立場や権力など、側から見えるものではなく、自身の精神を支えてくれる彼女のことを、あたしは心強いヤクザだと思っている

こればっかりは男に申し訳ない、なんて思うほどに力強い存在だ

 

あたしはウイスキーを飲む時に、必ずストレートで飲む

社会の思う固定観念に従順になる必要がないくらい、他の部分で女である自分を楽しみ、肯定しているからだとか思う

それくらいの話で、アメリカの男の人だって「スミノフを飲まない自分」によって自身が男であることを肯定しているだけだ

だから社会の固定観念を変えようとするなんて、頭の悪い人間の考えることだろう

頭がよければ社会ではなく自分自身で肯定する道を作ることができるから

 

まあそんなあたしは立派な社会不適合者で、きちんと社会からは見放されている

しかしあたしが生きたい社会はそこじゃないから、やっぱりどうでもいいな

 

それに現代の思想をどれだけ押し付けたとて、「男は権力、女は美貌」という潜在意識は消えない

社会の在り方を変えたところで個人の見え方までは変えられないのだ

性的嗜好と男女特性論の違いもわからずに話している人間が、差別と区別の違いなどわかるはずもないだろう

 

最後に一言だけ、あたしは差別主義者なの

だから頭の悪い人間は嫌いよ